幻影城ノベルズの袋とじ。あるいは戸川先生の体験学習。

在庫に幻影城ノベルズ「炎の背景」天堂真がある。
でもページが袋とじ状態。1ページずつ切って読まなあかんやん。
というか、どうみても裁断不良です。でも版元がもうないので返本できませぬ。
さて困った。


と思っていたのが先週あたりだったのですが、木曜日に戸川さんがいらっしゃったので思い切って聞いてみたら謎はすべて解けた。
というか、ホント自分のものの知らなさを思い知る。


最初の幻影城ノベルズはフランス装。通常16ページごとに裁断されるものをわざと行わない。
その上で幻影城特製しおり兼ペーパーナイフを付属させる。
読者は切りながらお読みください。フランス装なのであとで改めてお気に入りの装幀をしてくださいね。
という、本好きのためのナカナカ洒落た目的だったそうで。


ところが日本ではフランス装を装幀し直すなんてことはあまりないわけで、取次、書店から不良として返本された、というお話を伺う。
後日調べるとフランス装はアンカットが普通で、日本ではほとんどやらないカタチなのですね。
キチンと製本されて本が完成状態で売られるのがあたりまえの日本と、自分で本をつくる欧州。図書文化のちがい。
ほかに装幀のこととか教えていただく。ホント勉強になる。
先生ありがとうございました。


今日はストランドマガジンをチェック。ホームズがのんべんだらりと化学実験する絵に萌えたりとかしてなくてよ。
100年前の4コマ漫画とか、笑いたいのをこらえながら、本の状態をチェック。本屋の仕事は辛いでござる。


本はほっぽらかした痛み方というよりも、繰り返し何度も読まれてきた擦れ切れ方というべきか。
特に痛んでるのはVol.2(ボヘミアの醜聞唇のねじれた男)、つぎにVol.6(背中の曲がった男〜最後の事件)。
とはいえ、ほとんどの本は表紙が切れかかってる。Vol2はちぎれたのをテープでとめてある。


お客さんそっちのけで、表紙がいつ切れるかとヒヤヒヤしながら読んでいて、いやさ検品していてふと気がついたのが見返しの隅に貼られた小さなマーク。
最初は古本屋の値札かと思ったのですが、よくみると装幀屋のマーク。


「ヨーロッパは装幀家にまとめて本を装幀してもらうんだよ。だから書斎ごとに個性がある。」


ふと、そんな戸川先生の講義を実感してみる昼下がり。